APIC訪問団のミクロネシア・マーシャル諸島訪問
団員としては、APICから鳥飼玖美子理事、荒木恵理事・事務局長、斉藤拓馬職員、上智大学のあん・まくどなるど教授、織朱實教授、上智大学卒業生のソフィア会の三溝真季氏(ミクロネシアにのみ)が同行しました。
以下は、それぞれの訪問・視察の概要です。
【ザビエル高校】(ミクロネシア連邦・チューク州)
2月23日午後に、一行はザビエル高校を訪問しました。ケニー神父(理事長)とカール校長に挨拶した後に、講堂に移動したところ、全校生徒が授業を終えて待機しており、ザビエル高校の校歌で歓迎してくれました。重家理事長から挨拶があり、その中で、現在上智大学で学んでいるザビエル高校の卒業生の名前に言及すると、在校生は先輩の名前を知っているので割れんばかりの拍手でした。その後、訪問団も一人ずつ挨拶しましたが、こちら側も何か歌のお返しをということになり、上智大学卒業生の三溝氏と鳥飼理事などが上智大学の校歌を歌いました。歓迎の式が終わるとすぐに、数名の生徒が留学に関心があると理事長に質問に来ました。その後、全員で記念撮影をしましたが、生徒の輝く目に、一同魅了され、是非とも留学制度は続けなければならないと感じた次第です。
(注)ザビエル高校はこの地域の優秀校で、ミクロネシア連邦のモリ元大統領をはじめ、パラオ共和国、マーシャル諸島共和国などこの地域の政界・経済界のリーダーを輩出してきた私立高校。北西太平洋地域に位置するこれらの国々は歴史的にも日本と関係が深く、ザビエル高校の校舎は1938年に馬淵建設(本社・横浜市)によって建設された旧日本海軍通信施設の建物を校舎の一部として使用。また、ザビエル高校は、上智大学の設立母体でもあるカトリック・イエズス会が運営。
2月24日午前、チューク州電力・上下水道会社(CPUC)社長のケンボー・ミダ氏の案内で、APICが寄付した貯水タンクの視察を行ないました。村の集会所の前に設置された給水タンク(1,000ガロン)の側面には、「APIC No.2」(チュークのウエノ島全体で10基寄付した内の2基目)とペンキで書かれていました。タンクは、浄化装置付ではなく、屋根からの雨水を貯める簡素なものですが、かえって浄化装置の故障などのメンテナンスが不要なので現地ニーズに合っていると思われました。水は飲料用ではなく調理などに使っており、訪問したときには住民がマグロを調理していました。そのタンクを近隣住民30~40世帯が使うようで、住民はとても感謝していました。ミクロネシア・マーシャルでは雨水に依存しており、こうした貯水タンクが住民の生活に役に立っていることを確認できました。
(APICが寄付した貯水タンクの前で)
チューク州においては、2月23日の夜、宿泊ホテルの会議室において、APICの「若手リーダー招待計画」で訪日した上記のケンボー・ミダ氏、上智大学への留学生、ロジャー・モリ前駐日ミクロネシア公使、ザビエル高校のケニー神父(理事長)を招待して、再会の集いを開催しました。2018年に卒業したザビエル奨学金制度第1期生のメアリー・モリ氏は子供を連れて参加してくれました。同日開催された環境セミナーを準備してくれた元APIC-MCT留学生のブラッド・モリ氏とシャナイア・アーノルド氏も参加した再会の集いでは、思い出話に花が咲き、APICの理解者・仲間のきずなを深めるよい機会となりました。
(メアリーさんとの再会)
(重家理事長主催の夕食会にて)
2月27日、ナン・マドールとナン・マドール・ビジターセンターを訪問しました。ナン・マドールは、ユネスコ世界文化遺産に登録された遺跡で、ビジターセンターは、外務省の草の根文化無償資金協力により建設されたものです。APICは遺跡保存の支援の一環として、在ミクロネシア日本国大使館との協力で、センターの入り口に銘板と案内板の作成・設置の支援を行いましたが、今回の訪問で、ナン・マドールの視察とそのビジターセンターを確認するという目的がありました。
日本大使館館員の同行でビジターセンターを訪問し、ポンペイ州環境局の局長から同センターについて説明を受けました。土地整備と建物の建設は終了しているが、まだ正式にオープンしていないということでした。内部は、米国が支援した説明パネルが壁に貼ってあり、展示ケースにナン・マドールのジオラマ風のものが置かれていました。
(注)ナン・マドール遺跡は、およそ100の人工島からなる太平洋地域で最大の巨大遺跡。2016年7月にユネスコ世界文化遺産に登録され、同時に危機遺産にも登録された。その主な理由として、遺跡および周辺環境の保全体制が整っていないことと、管理と運営システムの不備などを指摘。ビジターセンターは、遺跡の保護を目的とし、訪問者の動線管理や人数制限のほか、専門ガイドの育成、訪問者や現地住民への遺跡に関する理解促進と教育の拠点としての機能を持たせるもの。
2月26日午後、ローリン・ロバート外務大臣を表敬訪問し、その後、ウエズリー・シミナ大統領、アレン・パリク副大統領を表敬訪問しました。外相からは、APICの支援への謝辞が述べられました。また、外相は、駐日大使館の設立にかかわったことや日本での生活などの思い出を話し、日本に対する思いが感じられました。その後、大統領を表敬しました。大統領からもAPICに対する支援に対して謝辞が述べられました。有意義な表敬訪問となりました。
(ロバート外務大臣を表敬訪問)
(シミナ大統領、パリク副大統領を表敬訪問)
2月25日、一行は公邸に籠宮信雄駐ミクロネシア日本国大使を訪問し、現地情勢について説明を受けました。
(国連常駐調整官のヤープ・ヴァン・ヒエルデン氏と)
(MCT事務所にて)
2月26日午後、COMを訪問しました。生憎、学長も担当副学長も海外出張中ということで、代理で別の副学長と学部長に面会しました。これまでAPICの「太平洋・カリブ学生招待計画」には毎年1~2名COMから参加しており、本年夏の参加者についてもすでに決まったと連絡があったので、そのことに言及すると、学部長からは10名の応募があり、その中で1名を選んだと説明がありました。
その後、COMとの協力関係の強化や学生招待計画の評価などについて議論が行われました。
【マーシャル諸島海洋資源庁(MIMRA)】(マーシャル諸島・マジュロ)
2月29日の午前中に、ヒルダ・ハイネ大統領を表敬訪問することとなっていましたが、残念ながら当日朝、大統領の体調不良により、表敬がキャンセルとなりました。その後、日本大使館で、マーシャル諸島の政治経済情勢について説明を受け、午後に、マーシャル諸島海洋資源局 (Marshall Islands Marine Resource Authority:MIMRA)を訪問しました。MIMRAは、世銀の支援により建設された建物に事務所があり、最新の機器を使って船舶の同行をモニターしており、入漁料を支払っている漁船と支払っていない漁船、不審船がスクリーンに映し出されてモニターしており、水産資源の管理を行っているとの説明を受けました。
また、MIMRAは、離島振興の一環として、運搬船を回航して近隣の環礁から漁獲物を買い付け、マジュロで販売しています。買い取った漁獲物はMIMRAが運営するOuter Island Fish Market Center(OIFMC)に搬入し、鮮魚のまま販売する他、フィレやフィッシュボールに加工し、一般販売の他、学校や病院の給食用として供給しています。APIC一行もOIFMCを訪問し、JICAから派遣されている専門家(経営)から説明を受けました。マジュロの環礁内でとれる魚に比べて鮮度が落ちるので価格を低くせざるを得ず、赤字経営となっているとの説明を受けました。
(MIMRAにて)
マジュロ訪問の機会に、マーシャル短期大学の学長との面会を試みましたが、海外出張中で叶いませんでした。しかし、元APIC-MCT留学生のルフス氏が同短大の副学長付に就いており、同短大の会議室を使い、まくどなるど教授と織教授が指導している大学院生が、それぞれの博士論文と修士論文について説明する機会が設けられ、その後キャンパスを視察しました。今後、APICの「太平洋・カリブ学生招待計画」などの実施が円滑に行われることが期待されます。
3月1日は、ビキニ環礁で米国が行った水爆実験の70周年記念にあたっていて、同国は休日で、パレードや大統領の演説などの行事が開催されており、一行は施設訪問等は行わず、マジュロ環礁を視察しました。午前中に、環礁内の離島にボートで行き、透明で汚染されていない保護区域の視察をしました。午後は、環礁の3分の1ほど車で視察して、南端に位置するマーシャル短期大学のキャンパスも訪問しました。夕食は、上智大学の大学院生が現地で調達した食材を使って寮の厨房で作り、寮の食堂で一行もご馳走になりました。
(注)首都マジュロのあるマジュロ環礁は57の大小のサンゴの島が楕円形を描くように約100㎞にわたり連なっており、そのうち約50㎞が舗装道路で結ばれている。環礁であるため、島の幅は広いところで2㎞ほど、狭いところは15m程度しかなく、海抜も最高6mくらい。
(マジュロ環礁の離島へ)
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