太平洋・カリブ記者招待計画2024
参加者は、フィジーからライセアナ・ナシーガ氏、マーシャル諸島からイーブ・バーンズ氏、サモアからライーポイーバ・シェリル・ジャクソン氏、バヌアツからドディー・モーリス氏、バルバドスからサンディー・ディーン氏、ジャマイカからロリー・デイリー氏。加えて、共同プログラム・コーディネーターとして、フロイド・タケウチ氏及びドーン・マタス氏の2名も参加しました。この記者招待計画においては、各記者は共同プログラム・コーディネーターの指導の下、毎日、取材を終えた後、確認・打合せを行い、記事を1本以上執筆することが了解されています。なお、各訪問先にはAPICの側嶋常務理事代行が同行しました。
今回、一行は、都内のほか、鳥取県、島根県の海士町、松江市、出雲市で取材を行いました。
本計画は、2015年以降毎年実施してきましたが、コロナ禍のために2020年と2021年は中止し、2022年に再開して、2024年で通算8回目の実施となりました。
◆都内視察とブリーフィング
9月27日に記者たちは共同プログラム・コーディネーターと合流し、最初の助言を得て都内を経験した後、30日にAPICにおいてプログラムについての全般的な説明を受けました。その際、重家理事長は、日本の歴史と政治・経済・社会の現状について説明しました。それから一行は外務省を訪問し、アジア大洋州局大洋州課と中南米局カリブ室から、各出身国と日本との関係等について説明を受けました。
(ブリーフィングの様子)
◆前米子市長の取材等
10月1日朝、一行は、羽田から山陰に向かい、米子鬼太郎空港に到着後、大根島の由志園において元外交官で前米子市長の野坂康夫氏と昼食をともにし、前市長から、市長として取り組んだこと、少子高齢化等の問題、更にはふるさと納税の評価を含め、地方自治の状況について説明を受けました。食事後、一行は前市長の案内で由志園の日本庭園を鑑賞しました。
それから一行は、境港市で「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターが各所に配置されている水木しげるロードの散策を楽しんだ後、七類港からフェリーで隠岐諸島の海士町に赴きました。
(左:野坂前市長との昼食、右:水木しげるロード)
◆島根県隠岐諸島の海士町を訪問
10月2日、まず記者一行は、海士町役場を訪問し、大江和彦町長他を表敬し、町長から農業と漁業の従事者が多い同町において人や企業を誘致する政策を実施してきていることについて説明を受けた後、課長レベルから海士町の取組について詳しく説明を受けました。人口減少と財政危機に直面した海士町は、町長始め町職員の給料カットを実施しつつ、人とビジネスの誘致活動に取組み、人口も増加に転じ、財政状況も改善したとのことでした。
その後、海士町に移住してナマコ加工工場を経営している宮崎雅也氏を訪問し、ナマコの加工や輸出の状況等について説明を受けました。
昼には、漁港のある豊田地区に移動し、同地区の方々からの指導を得て、捕れたてのハマチをおろして刺し身にして、それを使った丼を作る体験をした後、自分で作った丼を昼食に食べました。
午後は、米国出身で、ミクロネシア連邦で教職に従事した後、訪日し、海士町でボート製作を行っているハワード・ライス氏の製作現場を訪問し、同氏が海士町でボート製作に携わることとなった経緯と、子供たちにボートの製作や航海に関することを教えていること等の説明を受けました。
その後、公立の隠岐國学習センターを訪問し、同センターが高校での学習を補っている状況を確認し、地元の高校生と域外から留学している高校生の双方から海士町での学習・生活状況等について聴取しました。
最後に、一行は、大江町長を始めとする町役場関係者と夕食をともにし、くつろいだ雰囲気の下、懇談を行いました。
3日朝、一行は、フェリーで海士町を出発しましたが、その際、大江町長と町役場の担当者から見送りをしていただきました。
(左:海士町町長及び幹部と、右:海士町役場でのブリーフィング)
(左:ナマコ加工工場、右:刺身作り体験)
(左:ボート製作現場、右:隠岐國学習センター)
◆島根県を訪問
3日午前、海が荒れていたため、目的地が島根県七類港から鳥取県境港港に変更になりましたが、ほぼ予定通り本土に到着しました。
一行は、午後、島根県庁で地域振興部中山間地域·離島振興課、商工労働部観光振興課、及び環境生活部環境政策課、並びに島根県水産技術センターから、島根県の概要、中山間地域対策(「小さな拠点づくり」)、観光振興、宍道湖におけるしじみ資源の管理、等について説明を受けました。
その後、山陰中央新報社において、万代剛編集局次長、藤原基壮総務局次長、及び、オンラインで隠岐の島町から参加した鎌田剛隠岐支局長から、隠岐諸島での取材を含む同社の活動状況について説明を受け、メディアとしての共通の関心事項等について意見交換した後、職場に案内され、杉谷健司編集局長から説明を受けて、作業現場を視察しました。
4日、悪天候のため、早朝に予定していたしじみ漁の視察は中止となり、一行は、午前、宍道湖漁業協同組合において、しじみ漁のこれまでの経緯や現状について、しじみ資源維持のための方策を含め説明を受け、販売用のしじみ選別方法の実演を見た後、渡部和夫組合長他との昼食懇談を行いました。昼食にはしじみ汁も出していただきました。
午後は、島根県立宍道湖自然館ゴビウスを訪問し、島根県の豊かな自然を理解してもらうという目的で宍道湖や中海の魚を中心に展示し、水槽の水位を子供たちの目線に合わせていることや、子供向け学習プログラムを実施していること等、ゴビウスの特徴について説明を受けた後、水族館を案内してもらいました。記者達は島国出身ですが、自国に水族館がない国もあり、水族館の視察を楽しんでいたようです。
5日(土)は、晴天となり、一行は、観光客として、午前、英語を話すボランティアの案内により松江城の歴史と国宝たる具体的価値について説明を受け、その後、堀川の遊覧船で、回りの景色と低い橋をくぐる際船の屋根が下がるのを受け低姿勢にしゃがむ経験を楽しみました。
午後、足立美術館を訪問し、同美術館設立の経緯、人口庭の手入れ、所蔵美術品等について説明を受け、一同、庭園の美しさに感銘を受けたようでした。
(左:島根県庁、右:山陰中央新報社)
(左:宍道湖漁業協同組合、右:島根県立宍道湖自然館ゴビウス)
(左:松江城、右:足立美術館)
◆再び都内で取材およびプログラム修了式
一行は、7日午前、朝日新聞東京本社で、国際報道部の鈴木暁子次長から、作業場を案内された後、会議室で各国のメディアの状況や国際情勢等についてジャーナリスト同士の率直な意見交換を行いました。
午後は、東京スーパーエコタウン事業について、東京都の関係者からリサイクル率を高めて最終処分するゴミの量を減らす取組等の説明を受けた後、高俊工業で産業廃棄物について90%以上をリサイクルしている処理状況を視察しました。
同日夕刻に、プログラム修了式と重家理事長主催夕食会が開催され、各記者は取材の成果を報告しました。印象に残ったものは、海士町コミュニティの状況、島根県の観光資源、日本の記者との意見交換、ふるさと納税制度、気候変動、廃棄物処理等、記者により異なっていましたが、皆、今回の訪問は有意義だったと述べていました。
10年前のAPIC記者招待計画の開始以来、同計画の準備と実施に関わってきた共同プログラム・コーディネーターのフロイド・タケウチ氏は本年限りでコーディネート業務から引退することとなり、重家理事長から同氏に感謝の記念品を贈呈しました。2025年からは、ドーン・マタス氏がプログラム・コーディネーターを務めます。
(高俊興業にて)
(左:修了式、右:コーディネーターを引退するフロイド・タケウチ氏への記念品贈呈)
(重家理事長主催夕食会)
(以上)
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