インターン学生の声
APICでは、国際協力について大学生の理解を深めるため「APICインターン制度」を設けています。10月19日のAPIC早朝国際情勢講演会を傍聴して、次のような印象記を寄せました。

「中国及び朝鮮半島情勢―北京の視点を踏まえて」を傍聴して

　外務省アジア大洋州局審議官石川浩司氏による講演が、「中国及び朝鮮半島情勢―北京の視点を踏まえて」というテーマで2017年10月14日にホテルオークラで行われた。内容は、主に中国経済の発展の一方で中国共産党の展望との間にジレンマが生じていることに焦点をあてて話された。

　まず、石川氏は大陸の中に2つの中国があることに言及した。それは、確実に多様化している中国市民の考え方がある一方で、市民を統一化しようとしている習近平の動きの違いである。実際に、中国の経済的変化は大学進学率・海外留学者数・出国者数の増加等の社会的変化をもたらしている。しかし、習近平は新時代の中国の特色のある社会主義思想とする「共産主義国家」を標榜し、中国市民が望む多様化を寧ろ統一化しようとしている。その結果、人権弁護などの一切摘発、メディアの縛り、優秀な人材の国外移動等が起きている事実がある。

　石川氏の講演で最も印象深かった事は、中国は外交面促進より、まず内政を整えることが重要ということを示唆していたことである。国を統制しようとする姿勢が強すぎることで、優秀な人材が国外へ流れてしまうという点で私も石川審議官の分析に注目した。

　実際に、中国の海外留学者と出国者数は毎年増加している。また、インターネット普及率も同時に増加している。この３つのデータから、優秀な人材は国外でもインターネットを通じて、同じ中国のコミュニティで世界中どこにいても、ビジネスができる状態が整っているといえる。一例として、私の中国人の知り合いは日本の高校・大学を卒業後、大手日本企業に入社して、数年後に退社をし、現在、自身で外国の観光各のためのホステルを日本で運営している。そのホステルを立ち上げるための資金は、アメリカ在住の中国人の友人から得ていると話していた。このように、優秀な人材はインターネットを通じて、国外にいながらも、世界中に散らばっている中国の仲間と協力しながらビジネスを運営している。従って、多様化している市民の中の優秀な人材は国外へと移動するため、内部の中国の発展にネガティブな影響が生じ得る。

　しかし、いままで人口13億人の国家を統一したリーダーはかつていない。13億人を統一させるには、習近平の政党のように徹底した共産主義政党である必要があるのかもしれない。だが、多様化しようとしている国内の動きの中で、強制的に統一しようとすることで、言論の自由等を市民から剥奪し、その結果、優秀な人材は国外に出てしまうという点で国内の発展にマイナスの面が浮上するため、外交より内政を整えることにフォーカスすることが重要であるのであろう。しかし、3時間半におよぶ習近平のスピーチは、オーストラリアン紙のグレッグ・シェリダン氏の言うように、ジョージ・オーウェルの著書「１９８４」の描いた、市民がビッグブラザー（中央政権）の監視下に常に監視されているという世界が、中国で実現されようとしている象徴である。



インターン生
上智大学4年　太田 あおば

(※このインターン生の印象記は、講師の意見やAPICの意見を反映したものではありません。)