一般財団法人 国際協力推進協会
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【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり


寄稿:駐トリニダード・トバゴ大使 平山 達夫
【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり
(ポートオブスペイン市遠景)

1.トリニダード・トバゴと兼轄8カ国

(1)トリニダード・トバゴは、カリブ海の南東の端に位置し、ベネズエラとは目と鼻の先にあり、石油と天然ガス資源で発展してきた国である。観光依存が高い他のカリブ諸国とは趣を異にする。

(2)当館は、当国に加え、東カリブ6カ国とガイアナ及びスリナムの計9カ国を担当している。9カ国の人口を合わせても300万人強であるが、独立国家として国連で9票を持つ。また、カリブ14カ国はカリコム(カリブ共同体)を設立し、地域統合を進めており、その事務局はガイアナにあり、当館の担当となっている。当地着任後、1年近くかけて9カ国全部に信任状捧呈を済ませることができた。


2.トリニダード・トバゴと日本

(1)両国は、1964年に外交関係を樹立し、79年に在トリニダード・トバゴ日本大使館が開設され、長い友好関係を有している。2014年には、安倍総理(当時)が日本の総理として初めて当国を訪問し、日カリコム首脳会合が開催された。本年7月20日には、ジャマイカ訪問中の茂木外務大臣とカリコム外相との間で、第7回日カリコム外相会合がオンラインで開催され、日カリコム関係、地域情勢等が協議された。

(2)当国経済は、石油ガス産業を基盤としているが、石油ガス価格の低下、生産低迷により、厳しい状況にある。そこにコロナ禍による支出が増え、財政赤字は増加している。そのような状況で、三菱3社(三菱ガス化学、三菱商事、三菱重工)が参画し、カリビアンガス化学(CGCL)のメタノール製造プラントが完成し、20年12月に生産を開始した。これは総額10億米ドルの大規模プロジェクトで、日本の当国への最大投資案件である。

(3)当地では日本車を初め日本製品一般に人気は高いが、日本文化への関心も高まっている。日本とは1万4千キロ近く離れているが、インターネットの普及等で日本を身近に感じることができる。アニメ等の人気は高いし、日本食も増えており、カリブ風ではあるが、寿司も人気メニューとなっている。

(4)日本への関心や交流は以前から行われており、西インド諸島大学での日本語教育、JETプログラム等によって長年支えられてきた。西インド諸島大学語学学習センターでは20年以上にわたり、1,700人以上の学生に日本語を教えてきた。JETプログラムは、15年以上も当国で実施され、今まで170人弱が参加している。JET帰国参加者は、JET同窓会を形成し、日本での体験を当地で伝え、両国の架け橋となる活躍を見せている。

(5)2020東京オリンピックのホストタウンとして鹿児島県大崎町と高知県中土佐町との交流が既に開始されている。コロナ禍の影響はあるが、オリンピック後も交流が続くことが望まれる。

【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり
(カリビアンガス化学(CGCL)訪問)

【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり
(上智大学学長一行の当地訪問(西インド諸島大学との会議)(19年8月))

3.コロナ禍の影響とコロナ後へ向けて

(1)当国の国境は、20年3月に閉鎖され、1年4カ月経って7月17日にようやく再開された。国内でも、外出規制、経済活動規制が実施され、当館の活動も大きな影響を受けている。以前は日常茶飯事であった会議や行事は殆ど開催出来なくなった。当国の国民的祭りであるカーニバルも今年は中止となり、当館も2月の天皇誕生日祝賀レセプションの開催を断念し、当国外務大臣の祝賀メッセージ等の記念ビデオをユーチューブで配信した。

(2)また、国境閉鎖に伴い、毎月数度行っていた兼轄国への出張が途絶えた。20年には多くの国で総選挙が実施され、ガイアナとスリナムでは政権交代があったが、新政権との対面会談は出来ていない。更に、招へい事業が軒並み延期され、昨年出発予定であったJET参加者、各種招へいや研修事業は延期となったのは残念である。

(3)この状況下で、誰もが何ができるのか悪戦苦闘している。1つには、規制を遵守し、対面での行事を行うことで、要人との会談、叙勲や外務大臣表彰の授与式、懇談会を小規模で実施している。JET同窓会を対象に実施した手打ちうどん実演は好評だった。もう1つは、オンラインの活用であり、大人数の会合、兼轄国との行事などはオンライン対応となる。昨年の日本語弁論大会やJET関連会合等もオンライン化され、どこからでもアクセス可能という利点もあった。

(4)ワクチン接種が普及し、国内規制や国際渡航が緩和されても、以前の状態に完全に戻ることは難しいが、現地に行き、顔を合わせることの重要性が消える訳ではない。オンライン方式に利点もあるので、その双方の利点、強みを組み合わせて、効果的な活動を実施することが必要となる。

【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり
(天皇誕生日祝賀レセプション(20年2月。トゥーサン外務次官との乾杯))

【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり
(ブラウン外務大臣との夕食会(21年3月))

【大使だより】トリニダード・トバゴとの関係拡大の潜在力あり
(JET同窓会委員との懇談(21年4月。手打ちうどん実演))

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