第11回「ハイチ便り」(最終回):ハイチの文化
~ 食材や食文化について ~
ハイチは、(ハイチ)クレオール料理でも知られています。その歴史と自然の恵み、文化の交流するところでもあり独自の食文化が発展しながら根付き、さらに革新を加えながら発展を続けています。
ハイチ・クレオールと呼ばれる、歴史的な経緯からのフランス系の要素と先住民のもの、そしてアフリカから持ち込まれたものが混ざり・かつ伝統が維持されながらできあがった一つの食文化です。
これらのベースに加えて、スペイン的なもの、他の中南米でも見られるものや最近ではアメリカなどの影響も受けつつ、日常の食事からレストランで楽しむグルメの域までその裾野は広がっています。
また、クレオール料理に加えて、ハイチを代表する「食材や食品」にはそれ以外にも特徴的なものがありますので、合わせて御紹介してまいりたいと思います。
<パート1:世界ともつながりのあるハイチ産品や原料>
直接であったり、間接であったり、歴史的にであったりと実は知らないところでハイチと関係のあるものを口にしているかも知れません。以下に少し御紹介します。
【砂糖とサトウキビ】
(サトウキビ)
今でもサトウキビ畑は主要な産地に広がっており、その生産量は過去に比べればかなり減っているもののメジャーな農産物ではあります。サトウキビそのものもリヤカーに満載され、道ばたでカットして売られています(繊維質ですが、そのまま噛むと甘いジュースが楽しめます)し、産地ではサトウキビをアトリエに持ち込み、ジュースを絞って、何段階もかけて煮詰めて黒糖にしたりしています(ハイチでは、ラパドゥ(Rapadou)といい、棕櫚で巻いて保存します)。
(ハイチの黒糖ラパドゥ)
(ハイチを代表するラム酒メーカー・バーバンクール社の150周年記念ボトル)
オークの樽で何年も寝かせると味は丸くなり香りも甘くしっとりとして、ブランデーと同じように「味と香」を楽しむことができます。バーバンクール社は、200年以上の歴史があり、古くからの樽もあるみたいですが、その貯蔵庫も2010年の大震災時に被害にあったとかで、その収拾も兼ねて、幾つかの樽をブレンドして150周年記念ボトルが売りに出されたとのことです(少なくとも40年以上寝かせた樽のラム酒がブレンドされているとか。)。
また、小さい蒸留所(500件以上との説も!)で、同じ材料からほとんど同じようなお酒を蒸留しているものがあり、これらはクレラン(Clairin)と呼ばれています。いわゆる地酒として広く楽しまれていますが、時折規定外の混ぜ物をした粗悪品が出回るらしく、集団で亡くなる、いたたましい事件が発生したりしています。
【グラン・マルニエ】
西洋菓子作りやカクテルに欠かせないオレンジリキュールの「グラン・マルニエ(Grand Marnier)」や「コアントロー(Cointreau)」はフランスを代表するリキュールですが、実は、その材料であるビター・オレンジ(使われるのは皮だけです)はハイチ産の「シトラス・ビガラディア」であり、その風味からハイチ産でなければならないといった材料で、味と伝統を支えているといっても過言ではありません。この苦みと風味のある柑橘類はハイチの北部で栽培されており、グラン・マルニエは全量が、コアントローはブラジル産のものと半々で作られ、風味が異なります。実はこんなところでもハイチの御世話になっている(知らずに食べているお菓子やカクテルの方でも)ということです。
【コーヒー(やカカオ)】
(天日干し中のコーヒー豆・焙煎中のコーヒー・(右下は)カカオ)
<パート2:ハイチ・クレオール料理>
ハイチにおけるクレオール料理・日常食などを中心に主なものを以下に御紹介します。
【スープ・ジュムー】
(スープ・ジロモン(具沢山のカボチャのスープ))
諸説あるかと思いますが、簡単には、フランスの入植者達が食べていたもので、当時の奴隷には食べる権利がなかったという時代を経て、1804年の独立を機に、新自由人がその象徴(特権階級であったフランス人入植者と対等を意味するものとして)としてスープ・ジュムーを食し、また、建国の祖ジャン・ジャック・デサリーヌの妻、マリー・クレール・ウールーズ・フェリシテ・ボヌールが、滋養に満ちたこの具沢山のスープを1月1日に食するように広めたとされています。かぼちゃベースのスープですが、牛肉が入っているのが特徴の一つと言えるかと思います。入れる野菜は個人や家庭毎に好みや味があるようです。野菜は、ジャガイモ、にんじん、カブが標準のようで、香味としてセロリも入っていることがあります。
いずれにしても国民食でありハイチ人のコミュニティにおいても欠かせないもののようです。大きなハイチ人コミュニティがある米国フロリダ州のマイアミにおいても1月1日を前に新聞のマイアミ・ヘラルドにもスープ・ジュムーの記事が掲載されたりしています。
【グリオ(Griot)】
(グリオ(豚肉のディープ・フライ))
【ディリ・(アク)・ジョンジョン(Diri (ak) djon djon)】
(ディリ・ジョンジョンの左上は通常の付け合わせ、左下は少しきどったレストラン風、右上はジョンジョン・スパゲティ、右下は乾燥ジョンジョン茸)
(リ・ナショナル)
【ランビ(Lambi)】
(ランビ・クレオール)
【アクラ(Acra)】
(アクラとマランガ芋)
【バナヌ・プゼ(Banane pesée)】
(左側の付け合わせの黄色いのがバナヌ・プゼ(料理自体は鱈のコロッケ))
【その他の料理や食材】
以上、代表的な料理等を挙げてきました。この他にも、カブリ(アフリカでも見かける山羊の一種)や牛肉を先ほどのグリオの様に調理したものは、タソ(Taso/Tasso)と呼ばれて、これもポピュラーです。また、海辺では、ロブスター、タコ、魚も良く食されます。
(魚料理も多くはないですがあります(黄色いのはバナヌ・プゼ))
(パンの実(右側はスライスして揚げたもの))
(どこにでもあるマンゴーやアボカド、右上はモンセルのイチゴ、下は街道沿いのバナナ・柑橘類)
(街中の椰子の実売り:ココナッツ・ウォーターのため)
(ビール工場とプレスティージ・ビール)
また、美容と健康の面では、モリンガとヴェティバーにも注目かも知れません。
(※2018年時点での執筆記事)
(※写真は全て筆者が撮影)
(※本コラムの内容は、筆者の個人的見解であり、所属する機関の公式見解ではありません。)
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