インタビュー:駐日マーシャル諸島共和国特命全権大使 トム・ディー・キチナー閣下(His Excellency Mr. Tom D. KIJINER)
Q.日本とマーシャル諸島との関係についてお話しいただけますか。
マーシャル諸島共和国と日本の関係は、第二次世界大戦以前より、国際連盟委任統治領として続くもので、その関係は100年以上にもなります。マーシャル政府も、自国と日本政府や日本の人々との間に特別な繋がりがあることを幸運に感じ、感謝しています。日本の統治に対する評価は様々に語られますが、マーシャル諸島の場合、私は否定的な要素よりも肯定的な要素の方が多かったように思います。マーシャルの人たちは、日本の統治の間に日本の特徴や伝統的な生活様式を学ぶことが出来たことを誇りに思っており、それらの伝統や生活様式は今日においてもマーシャルに受け継がれています。また、日本の統治下にあった当時、ビジネスマンや軍の関係者として訪れていた日本人男性とマーシャルの女性が結婚することもあり、彼らの子孫が今日の日系マーシャル人として活躍しています。
Q.マーシャル諸島共和国の環境問題に対する取り組みについてお聞かせください。
これはマーシャル諸島にとって非常に深刻な問題であると同時に、太平洋に浮かぶ他の島国にとっても深刻な問題になっています。2015年に行われた島サミットでもでも中心的な議題として取り上げられました。その際に安倍総理が表明した太平洋島嶼国への500億円を超える経済的な支援は、太平洋島嶼国にとって非常に有益なものとなると確信しています。私たちは日本やその他の大国が気候変動に対する基金について話し合いを持つ場により一層の透明性を求めますし、マーシャル諸島共和国もその話し合いの一部になるべきだと考えています。そして、私たちは私たちの国を気候変動から守るためにすべきことを明確にしていきたいです。
Q.マーシャル諸島共和国の観光政策についてお教えください。
ミクロネシア地域の中でも、アジアの国々に近いパラオのような国と違って、マーシャル諸島は海外からのアクセスが非常に悪く、観光地として不利な立場に置かれています。しかし、そのような不利な要素にも決して屈することなく、環境政策と併せてマーシャルの自然を売りに観光の促進を図っていきたいと考えています。島々に広がる美しい景観だけでなく、マーシャル周辺の自然豊かな海には第二次世界大戦時に運用された各国の戦艦が眠っており、多角的な視点から観光資源をアピールしていくことが重要です。
また、国内の制度的な整備だけでなく、ビザ免除プログラムの申請などを通して各国に働きかけ、アクセスしづらいという地理的な弱みを軽減していくことが今後の課題であると考えています。
Q.日本とマーシャルの今後の関係の発展をどのように期待しますか。
将来にわたって日本とマーシャル諸島の良好な関係を維持していく際には、学生が貴重な存在となってきます。両国の学生が交流することを通して、より良い関係を構築することができるはずです。最近だと、マーシャル諸島から理系の高校生が日本を訪問するなど、マーシャルと日本の子どもたちが交流を行う基礎的なプログラムは、現時点である程度構築されていますが、こういった活動が深化し、拡大していくことが望ましいと考えます。
大学レベルでの交流について言うと、JICAの奨学金プログラム等、マーシャルを訪れる教育プログラムはありますが、実際にマーシャルを訪れる学生は1年間で1~2名程度しかいません。また、日本で修士号を取る奨学金制度も存在していますが、マーシャル諸島からこの制度を利用している学生も決して多くありません。こうした留学制度については、より長期間の滞在が可能になれば、貴重な経験を今以上に積むことができると思います。
私は駐日大使として、より多くのマーシャル人が日本を訪れ、より多くの日本人がマーシャルを訪れるよう働きかけていきたいと思っています。特に人の移動がよりスムーズになるよう、日本政府に対してマーシャル政府のビザ免除プログラムを受け入れてくれるよう働きかけていきたいと思います。
(左から:金原、キチナー大使、ノート公使、小原)
駐日大使ご歴任中2021年9月12日ご逝去、ご功績を追憶し謹んで哀悼の意を表します。
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